寮美千子「夢見る水の王国」

寮美千子「夢見る水の王国」


海辺の町でおじいさんと黒猫ヌバタマと暮らしていた少女マミコは自分の影「マコ」に名前と一角獣の角を奪われてしまう。
世界の果てにそれを捨てに行くというマコを追い、マミコはミコとなって白い仔馬とともに海を渡る。
名前と角を取り戻すために。

美しいイメージが重層的に連なる物語。
あたかも作中の雲母掘りの老鉱夫のごとく、
読者は章を読み進めるごとに、一枚また一枚と全く異なるきらめきを
見せる物語に魅惑されることだろう。
全編これ美しい詩篇のような。
どこを切り取っても一編の詩として成り立ってしまうほどの完成度。

ばらばらに提示されていた物語はきちんとラストに向かい収束してゆく。
終盤のイメージは圧巻です。

私が勝手に思っている寮さんの物語にこめられたメッセージ、それは
「私はこの世界で私として生きねばならない」
ということだと思っているのだけど。
今回もそれを受け取れたと思っています。

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「スコーレNo4」 宮下奈都

「スコーレNo4」 宮下奈都 光文社

これは、新聞の書評で気になった本だが、大当たり!
とてもよい本だった。

端的にいうと、麻子という一人の女性の成長物語なのですが。
可愛らしい容姿の妹との差、妹のように心底熱くはなれない自分の性格を自覚しつつ、
自分なりの核をみつけてゆく麻子の姿が好感が持てます。
従兄弟の槇の言う「僕は麻といえば、木を思い出す」というくだりは
とても素敵^^

そしてラストがこれまた素敵^^


帯のコピーは、「人生には4つの小さな学校がある。仕事、家族、恋愛。。。」

すべて読み終わって、あれ?4つめは、なにかな?と考えてしまった。

<反転>
揺らがない、自分の中でこれというもの。 かなあ?

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「一瞬の風になれ3」佐藤多佳子 

「一瞬の風になれ3」佐藤多佳子 講談社

2巻の終わりに起こった事件については、
さほど引きずることなくあっさりと通り過ぎたのが
ちょっとなんだかなーと思ったけど。

いよいよ新二と蓮も3年になり、
最後の大会。キャプテンとしての責任感。など、
新二もなかなかの成長ぶりをみせてくれます。
それにしても。とても読後感がよかった。
リレーのどきどき感。恋のもどかしさ(笑 、まさしく青春!!
それにしても100×4リレー(4継)がこんなに手に汗にぎる
競技とは知らなかったです。
私は短距離は全然だめなのですが、だからこそ、走る才能をさずかった
蓮と新二のがんばりぶりに素直にひきこまれました。
クールでだらけている蓮が本気になるあたりもぞくぞく。

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「崖の館」 佐々木丸美 

「崖の館」 佐々木丸美 東京創元文庫

北海道、雪にとざされた、お金持ちのおばさんの別荘。
冬休みに集ういとこたち。
そして、事件がおきる。。。
それは、2年前に死んだ、いとこの千波ちゃんと関係あるのか?
千波ちゃんの死の謎を解こうと試みる涼子だが。


いわゆる、クローズドミステリ、「山荘もの」なのだが
70年代に、こんなペダンチックで叙情的なミステリがあったんだなあ。
びっくりです。
ミステリ的には、よく考えると、つっこみどころも多いのだが(苦笑)、
(まあ、あの時代ならOKだったのかなーと思われる)
読んでるあいだは、さほど気にならず、どっぷりと雰囲気にひたって
楽しめました。
復刊ありがとー。という感じです。

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「一瞬の風になれ 1・2」 佐藤多佳子

「一瞬の風になれ 1・2」 佐藤多佳子 講談社

サッカーの才能あふれる兄をもつ新二は、自らのサッカーの才能に見切りをつけ
高校で陸上をはじめる。幼馴染の蓮の走る姿にひきこまれたからだ。
スプリンターとして天性の才能を持つにもかかわらず、
どこか不真面目な蓮や、さまざまなタイプの先輩にかこまれ
新二の陸上部生活がはじまる。

たぶん、圧倒的才能をもつ者を前にしたときの自分、とか、
才能をもつ者もたざる者っていうの、
私のツボなんだろうなあ。(ハチクロの自分的ツボもそうだったし)

これは、主人公の新二くんが、素直で性格がよくてめげないところが
好感が高い!
で、結局、新二にも、短距離の素質があるというあたりが、
ちょっとずるいよ、とか思ったりもする(笑。

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「中原の虹1.2」 浅田次郎

「中原の虹1.2」 浅田次郎  講談社


浅田作品、ちょっと久々でしたが、
やはり抜群におもしろい!!
いっき読みでした。
まっすぐな生き様。ドラマチックな展開。
ややベタな部分もあったりしますが、それはそれでやっぱり
泣かされてしまう。
張作霖かっこいいわ~~~(笑)
歴史上だけで知っていた人物像にあらたな造型をして人間味あふれる
人物像を作り上げるのが浅田さんの魅力。
これを受験時代にでも読んでたら、近現代史も楽々だったのに!?
蒼穹の昴 とかなりつながっているのにも
楽しめます。ああ、再読したい!危険!^^;;

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「檸檬のころ」 豊島ミホ

「檸檬のころ」 豊島ミホ 幻冬舎

誰にでも、切なくキラキラした一瞬はあったはず。
あのころの気持ちを思い出させてくれるような
すてきな小説。
地味系女子高校生(笑)だった私にはほんとにツボでした。

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「安徳天皇漂海記」宇月原晴明

「安徳天皇漂海記」宇月原晴明 中央公論新社

壇ノ浦で入水した安徳天皇を軸に、第一部は源実朝、第2部はフビライ・ハンの時代が中心となって
描かれる壮大な物語。

第一部で描かれる実朝像がなんとも魅力的。歌人として名をはせた彼の作歌と
吾妻鏡 からの引用が随所に挟まれるのだが、それが物語にうまい奥行きを与えている。
私が歴史を学んでいるときには、実朝はなんとも影が薄い人物だなあくらいにしか
思っていなかったのですが、、、見直しました!

第二部ではフビライの使命をうけたマルコ・ポーロが活躍するのですが
彼の見聞きする風物が魅力たっぷり。マルコの語り自体も、魅力たっぷり。
この物語自体が「語りの物語」であるが、その「語りのもつ魅力」というのが、
大きな良さになっていると思う。

平家滅亡のときの安徳天皇と3種の神器の扱いも、説得力があったし、
実朝と元朝の時代的隔たりをつなぐやり方も、実に上手い。


第二部のもう一人の主人公、南宋最後の皇帝がまた切なくて涙をさそいます。。。

そして第一部第二部を通してのキーパーソンが安徳天皇であり、
高丘親王なわけですが。。。
高丘親王といえば、、渋澤龍彦の「高丘親王航海記」という作品があり、
それにインスパイアされたということは作者自身が述べている。
(これもぜひ読んでみなくては)


でもクライマックスシーンはちょっとナ○○カ。。。とか思ったりして(爆)
というのはおいておいて、壮麗な描写に感動。元の襲来についても
きちんと説明がついてしまう、細部まで考えられた伏線も、とてもすばらしかった。
そうそう、本の一番最初にある記述。古事記の引用。
いったいこれがどういう関わり?と頭のすみっこで疑問に思いながら読み進めていったのだが
驚きの解釈が成されていたりして。とにかく見事な物語でした。


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「ケッヘル」中山可穂 

「ケッヘル」中山可穂  文藝春秋

ケッヘル〈上〉ケッヘル〈下〉

伽椰はフランスの港町カレーの海辺で、海に向かって一心不乱に指揮をしている男を見かける。 男が振っていたのはモーツァルトの交響曲だった。 その男、遠松鍵人に頼まれて猫の世話をすることになり、さらには遠松の会社「アマデウス旅行社」で 働くことになった伽椰。

しかし最初の仕事でいきなり事件が。モーツァルトの曲に彩られた、錯綜する人間関係が織り成すドラマの幕が上がった。。。

全編にわたってモーツァルトの曲が聞こえてくるような小説。語り手が何人か交代し、しかも
いいところで交代してしまうので、続きが気になって一気に読んでしまう。
中心に鍵人を配してはいるが、複雑に織りあがった人間関係は読み応えがあり、ミステリじたてで
なかなか真相も分からず、最後まで読ませる。

モーツァルトの音楽に執りつかれたと言ってもいい鳥海武の生き方だが、
これもモーツァルトという作曲家の力のなせる技で、これが例えばブラームスとかだと
いまいちピンとこないであろう。モーツァルトにはそんな、狂気と紙一重みたいな部分があるのではないかと思う。


そしてラストシーンの読後感がとても良いのも好印象だった。
いくつか印象的な使われ方をしているモーツァルトの曲は、ぜひ聞いてみたくなってしまう。
とりわけ孤児院ミサのアニュス・デイなど涙しそうになった。


<若干ネタバレ>

美津子がビオラ弾きという設定も個人的に嬉しい(笑)「目立ちたくないけど、一番にはなりたいの」
ちょっと笑ってしまいました。そのとおりかも?(笑)
学園の夏休み。美津子と鍵人が弾くはずだったVnソナタ編曲はいったい何番だったのだろう。
幸せなままいられなかった二人が痛々しい。

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「さよなら妖精」米沢穂信

「さよなら妖精」米沢穂信 創元推理文庫


ある雨の日に出会った、異国の少女。マーヤと名乗った彼女の目を
通して見る風景はこれまでとは全く違う意味をもっておれたちの前に現れた。
「哲学的な意味がありますか?」
そして彼女は帰っていった。鮮やかな思い出と、口にしなかった真実を残して。
おれたちは、彼女が語らなかった真実を解こうと試みる。

やや観念に生きているような、理屈っぽい感じの男子。そして現実には
確固たる目的も無くてややダレている感じの。
そんな男子が、一人の女の子と出会って振り回され、変わっていく。
古典部シリーズなどで見せた米澤さんの、まさに本領発揮といった感じの作品。
すごく、よかった。

男女が出てくるのに恋愛関係ではないところも米澤さんらしい。
私はこういう人物像や関係が決して嫌いではなく、むしろ好きなんだなということが今回よく分かった。

ミステリフロンティアなのでいちおうミステリ部分もあって、
マーヤがどこから来たのか?というのを当時の日記や資料から
1年後に推理する、という形を取っている。
それと作中でマーヤが目にする、なにげない日常のひとこまが彼女からしたら
謎に見え、それが解かれていく様子は微笑ましい。

それだけに最後で提示された謎解きについては、胸がうたれる。。。

そして設定が1991年なので、ネットも、携帯もメールもなくて、
連絡をつける手段は手紙。なにかを調べようと思ったら、本。
そんな時代設定にしっくり合った雰囲気の物語だった。ちょっと懐かしかった。

それにしてもユーゴ紛争についてほとんど全く知らない自分が恥ずかしい。
このとき本当に受験直前で、だから試験には出ないだろう、てな感じで
スルーしていたのだろうな。恥ずかしい。。。

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