追想五断章

「追想五断章」米沢穂信  集英社

古本屋でバイトする大学生、菅生芳光は、ある人物の小説が掲載されている同人誌を 買いに来た客、可南子に、同様の小説があと4編、どこかにあるはずだから探してほしい という依頼をされる。小説はすべてリドルストーリーになっていて、結末だけが可南子の手元にある。 小説を探しはじめる芳光だが、いつしか過去の事件が明らかになり・・・

とても凝った構成のミステリです。まず作中作の小説があり、それがすべてリドルストーリー(結末の無い小説)になってる。
そしてさらに、小説の書き手をめぐる過去の事件がだんだん明らかになってくる。
米澤さんの上手さが光ってました。

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「二人の距離の概算」 米澤穂信

「二人の距離の概算」 米澤穂信


米澤さんといえば最近はすっかり「インシテミル」とかで有名になりましたが
私にとっては古典部シリーズであり、四季限定お菓子シリーズ。
で、これは、久々の(といっても数か月前に出てましたが)古典部シリーズ新作です。

奉太郎たちは2年になり、新入部員、大日向友子を迎えた。が、仮入部の最後の日、 彼女が、入部を取りやめると言いだした。 おりしも翌日は20キロマラソン大会の日。奉太郎はマラソンを走りながら なぜ彼女がそんなことを言い出すに至ったかを考える・・・


なにも、20キロマラソンをしながら考えなくても^^;;
と思うのですが。要するに一種の「安楽椅子探偵もの」ですね。
考えることと、マラソン中に行きあう同級生に話を聞くことくらいしかできないから。

二人の距離の概算、というからには奉太郎とえるの関係に変化が!?
と期待したりもしたのですが・・・。
まあ、いろんな二人の距離ですね。

奉太郎がぐるぐる思考するのをたどる読書はなかなか面白いです。
でも、実際にこんな男子高校生いたら・・・ちょっとどうかな?^^;;

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「雨のち晴れ、 ところにより虹」吉野万理子

「雨のち晴れ、 ところにより虹」吉野万理子 新潮社


湘南を舞台にした短編集。食事の趣味が合わない夫婦がささいなきっかけから危機におちいり・・・
という短編から始まり、共通する人物がちらちらっと顔を見せるものの
連作短編というほどでもないな、と思っていたら
中盤からはかなり繋がりが出てくる。
そのさじ加減もなかなか楽しめる。

どれも、心暖まる良い話で、冒頭の夫婦の話にしても、非常に共感できてしまうし、それでいながら
うまいぐあいに解決策を取っているという、ありそうで無さそうな、心地よい短編集でした。
中盤からはやや重いテーマが出てくるものの、さわやかさは失われず、すっきりと上手くまとめていた。
読んでよかったなーという気分にさせてくれる本。

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「完全演技者」山之口 洋

「完全演技者」山之口 洋  角川書店

大学をドロップアウトし、自分の音楽を模索している修。偶然レコード屋で見つけた 強烈な印象のジャケットに引かれて聞いてみたクラウス・ネモというアーティスト。 修はそのレコードを聞いた瞬間にクラウスの声に魅いられてしまう。クラシックとテクノを ミックスしたような不思議なサウンドにも。

クラウスに会いたい一心で、恋人サラの助けを借りてNYに渡った修。そこで修の運命は音を立てて回り始めた。

まず、クラウス、ネモという人物が強烈。仮面のようなメイクと立てた髪、
カストラートのような高音から深みのあるテナーまで自由自在な声。
ネモという人物は、オフステージの時でも常に「クラウス・ネモ」でありつづけ、
素顔を見せることが無い。
というよりもすでに「素」と「アーティストとしてのネモ」が同一化してしまっている。
ここらへんのテーマが、題名の「完全演技者」ともなっているのだが。
日本語の「演技」というとちょっとニュアンスが違って「パフォーマンス」と言ったほうが近いかもしれない。
パフォーマンスとは何か。どこまで自分をそれに捧げられるのか。
考えさせられました。


それにしても作中のネモの歌、曲、パフォーマンスはとても魅力的(クラシックとテクノの融合なんて
ひょっとしてすごい好みかも)、ぜひ現実にあったら聞いて(見て)みたいものだ。
かろうじて私が思い浮かべたのはマ○スミゼル・・・^^;;

・・・と思ったら。
この人、実在の人物がモデルだそうです。というかCDジャケット見たら、そのものじゃん^^;;
私は本当に洋楽にうといのですが80年代の洋楽、ロックに詳しい人が読んだら
また違う視点で楽しめるかも。

おそらくこの人は、現代の音楽シーンにいたら凄い存在になっていたのではないだろうか。
時代を先取りしすぎたゆえの悲劇・・・ いろんな意味で。

モデルになったひと

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「さよなら妖精」米沢穂信

「さよなら妖精」米沢穂信 創元推理文庫


ある雨の日に出会った、異国の少女。マーヤと名乗った彼女の目を
通して見る風景はこれまでとは全く違う意味をもっておれたちの前に現れた。
「哲学的な意味がありますか?」
そして彼女は帰っていった。鮮やかな思い出と、口にしなかった真実を残して。
おれたちは、彼女が語らなかった真実を解こうと試みる。

やや観念に生きているような、理屈っぽい感じの男子。そして現実には
確固たる目的も無くてややダレている感じの。
そんな男子が、一人の女の子と出会って振り回され、変わっていく。
古典部シリーズなどで見せた米澤さんの、まさに本領発揮といった感じの作品。
すごく、よかった。

男女が出てくるのに恋愛関係ではないところも米澤さんらしい。
私はこういう人物像や関係が決して嫌いではなく、むしろ好きなんだなということが今回よく分かった。

ミステリフロンティアなのでいちおうミステリ部分もあって、
マーヤがどこから来たのか?というのを当時の日記や資料から
1年後に推理する、という形を取っている。
それと作中でマーヤが目にする、なにげない日常のひとこまが彼女からしたら
謎に見え、それが解かれていく様子は微笑ましい。

それだけに最後で提示された謎解きについては、胸がうたれる。。。

そして設定が1991年なので、ネットも、携帯もメールもなくて、
連絡をつける手段は手紙。なにかを調べようと思ったら、本。
そんな時代設定にしっくり合った雰囲気の物語だった。ちょっと懐かしかった。

それにしてもユーゴ紛争についてほとんど全く知らない自分が恥ずかしい。
このとき本当に受験直前で、だから試験には出ないだろう、てな感じで
スルーしていたのだろうな。恥ずかしい。。。

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「夏期限定トロピカルパフェ事件」米沢穂信

「夏期限定トロピカルパフェ事件」米沢穂信 創元推理文庫

小山内さんに付き合わされて、夏季限定のスイーツ10選を巡ることになった
小鳩くん。
夏が終わったとき、そこには意外な事実が・・・?

この二人、別に付き合っちゃってもいいのにーと思うのだけど、
そうさせないのが米沢さんらしさなのか。
出てくる夏のスイーツはどれもこれも美味しそうで!(二人が実際に食べてないものまで)
でもトロピカルパフェだけは。。。苦い後味なんだろうな。

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「秋の大三角」吉野万理子

「秋の大三角」吉野万理子 新潮社

横浜の山手、ツタの学園に通う里沙。 痴漢から助けてくれたことから、バスケ部の真央先輩に憧れるようになる。 ある日、通学電車に「キス魔の痴漢」が出るという噂を聞く。 そいつらしき男に電車で遭遇した里沙だが、なんとそいつは・・・

七生子さんのところで知った本です。
最初は「ホラー風味の『マリみて』?^^;;」なんて思いながら読んでいましたが
(表紙は「ロクサヨ」風だし。。。)、
後半はやや意外な方向に進んだかな。
でも女の子の心理を丁寧に描いていて、好感が持てました。上級生への憧れとか、
友達との関係とか、ああ分かる分かる、って感じ。

いっぽうで、キス魔の正体、ネックレスの謎、など小さな謎を積み重ねて
大きな謎にもっていくあたりは読ませるし、
構成がしっかりしていて魅きつけられます。
さすが、作者はすでにTVドラマのシナリオの仕事をしているだけある。
そして文章がうまくて、さくさくと読み進める。
石田衣良さん(選考委員)言うところの「クリスピー感」?

いい意味で、「今」を感じる小説。

それにちょうど、舞台の近くの女子大(というか、モデル校かも)を訪れたばかりなので
情景が目に浮かびやすく、楽しめた。逆にいうと、まったくあのあたりを知らない
人が読んだときにはどうなのかなあと思う。

ところで主人公は中2なのだが、高校の先輩方に対する敬語の使い方がカンペキで、
どこも破綻がなかったのが、ちょっとすごいと思った(笑)ものすごく「身に付いている」感じ。
きっと作者もこういう感じの学生時代を過ごしたのでは。。。なんて思ってしまいました。

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「クライマーズ・ハイ」横山秀夫

「クライマーズ・ハイ」横山秀夫 文藝春秋

クライマーズ・ハイ

北関東新聞の記者、悠木。5年前に部下を亡くして以来、昇進をこばみ 1記者としてとどまってきた。そんな夏、 未曾有の大事故、日航機墜落事故が起きた。全権デスクを任された悠木は 地元紙としてのプライドと現実との狭間で苦悩しながら紙面づくりを進める。

その一方で、悠木は、親友、安西から共に「魔の山」谷川岳一の倉沢の衝立岩登攀に
誘われていた。だが、ちょうど出発当日、事故がおき、悠木は谷川に向かうことができなかったのだ。
一人で登山に向かったかと思われていた安西は、しかし、同じ頃、夜の街で突然倒れていた。

そしてまた、事故から17年後。悠木はふたたび衝立岩の下に立っていた。。。

すごく読み応えがあり、ぐいぐい引き込まれた。あの日航機事故のころ私は小学生で、事故の大きさもよく実感できていなかったけれど、
今あらためて、大変な事故だったのだと思う。
事故を扱った本は数年前に山崎豊子の「沈まぬ太陽」を読み、
その凄惨さにあらためて当時の関係者の苦労を思ったのだったが。

小説は、日航事故当時の過去、そして17年後の現在と交互に話しが展開する。
現在パートの衝立岩登攀シーンもすごくスリリングであるが(悠木が誰と登って
いるのかはネタバレしません)
やはり当時の新聞社の様子がリアリティと迫力たっぷりで読ませる。
地元でおきた事故といってもどことなく他人事な上司、過去に自分が携わった大事件をいまだに「勲章」とし、それを超えられまいと、紙面づくりの妨害にかかる上司。。。
対する若手記者は、12時間かけて山に登り現場を踏み、
スクープ取りの手に汗にぎる駆け引きをくりひろげる。
上司と現場の間に立たされ苦労し、安西の容体を心配し、家族との関係に悩み、
いろいろなものに翻弄されている悠木。
そんな中でひとつの答えを出したこと。悠木にとってはこれが一つの山だったのだろう。

当然、このころ携帯電話なんて無かったんだったっけな。と当時と現在の情勢変化が興味ぶかかったり。

登攀シーンのクライマックスも良かった。打ち込まれたハーケン、、、胸に迫るものがありました。

何のために山に登るのか、そう聞かれて答えた安西の言葉。
「下りるためさ」

何かから下りるためにはまず登らなければならない。

シンプルなようでいて深い、人生の命題なのだろう。

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「オリガ・モリソヴナの反語法」  米原万里

star-parple1「オリガ・モリソヴナの反語法」  米原万里 集英社文庫

オリガ・モリソヴナの反語法

60年代、プラハのソビエト学校に通っていた志摩。その学校の名物教師、 ダンス教師のオリガ・モリソヴナ。強烈なファッションと年齢不祥の外見、 口を開けば優雅?な罵り言葉と反語法を駆使した独特の表現、そしてダンス教師としての腕は超一流。 同僚のフランス語教師エレオノーラと共に二人は学校の名物教師だった。

ただし、二人には奇妙な言動が見られた。アルジェリアという言葉に
異常に脅えたり、
ある日、学校を視察に来た大佐が二人を前にして突然転倒、しばらく後に急死したり。

そんな二人のことを少し不思議に思いながらもオリガのことを慕いながら
学校で楽しく過ごしていた志摩だったが、帰国することになり、
親友カーチャとも連絡が途絶えてしまう。

時が過ぎ、志摩は大人になり、ソ連のペレストロイカを経て、
ふとオリガのことが気になって文献を調べ始める。。。


オリガを探す現代のパートと、志摩が在学していた当時の
ソビエト学校の様子が交互に語られるのですが、
オリガという強烈な魅力をもった人物像、そして、細い細い糸を辿って
オリガの正体がしだいに少しずつ明らかになっていくミステリ風味があいまって
先が気になって気になって一気に読破してしまいました。
話が進んでいくうちにオリガが話す独特の話法の謎も明らかになります。
当時の共産圏の社会情勢のすごさと
その中を生き抜くことのすさまじさに圧倒されました。

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「犬はどこだ」 米澤穂信 

「犬はどこだ」 米澤穂信  東京創元社

犬はどこだ


勤めを辞めて地元に戻ってきた紺屋長一郎。生活のために
犬探し専門の調査事務所を始めた。
ところが、犬探し専門に、と思っていたはずなのに
初日からまいこんだ依頼は、失踪した女性探しと古文書の謎解き。おしかけ
助手の半田と手分けして依頼に取り組み始めた紺屋だが。

この主人公の紺屋、「古典部シリーズ」の奉太郎に輪をかけて、やる気がない人物。
奉太郎はポリシーとしての省エネだからまだよいのだが、紺屋は
単に、気力が薄い。そこが時々いらいらしましたが、
でも、それは主に病気のために勤めを辞めて、だらだらしていた副産物であって、
本当はキレ者で行動的なのかも、とうかがわせる一面も無くはない。

米澤さんらしく細かいところで笑いがちりばめてあり
(ここで「オロロ畑」が登場するのには驚いた。一瞬、あれ?私は今
荻原浩を読んでいるんだっけ?と思ってしまったくらいだ。これってそんなにメジャーでは
ないんじゃ・・・^^;;)そこは楽しめた。
ちなみに「役不足」の用法が分からなかった私(^^;;

肝心の事件だが、、、これは、コワイ。かなーり、コワイ。自分の身にも
起こらないとは言い切れないし。

桐子が取った解決策は、あまり、同感できないなあと思ったけれど。
ラストの余韻の残し方も、ちょっと個人的には、あまり好きではない。

でも、シリーズ化ができそうだし、主人公二人のキャラクターなどは好きな感じなので
ぜひ続編を書いていただきたいです。

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