「ロスト・トレイン」中村弦

「ロスト・トレイン」中村弦  新潮社

廃線跡めぐりが趣味の牧村は、同好の士、平間と仲良くなり、地元が同じことから、親しくなる。だがある日、平間は忽然と姿を消す。牧村は手掛かりを探し、彼が失踪前に口にしていた「日本の中にはまだ世に知られていない廃線があり、それを端から端までたどると、奇跡がおきる」という噂の真実を探り始める・・・


ファンタジーノベル大賞作家の中村弦さん。
この賞出身の作家さんはわりと趣味にあうことが多いので、ひととおり読むようにしています(すべてではないけど)
受賞作の「天使の歩廊」も謎の建築家と洋館をからめたファンタジーで面白かった!

で、これも面白かったです。鉄道好き(いわゆるテツ)ならさらに楽しめるかも。
廃線跡の噂をさぐるあたりはミステリだし、後半はファンタジー風味が加わり、1冊で2倍楽しめる感じです。
人はなんのために鉄道に乗るのか?
しみじみとした余韻がただよう作品でした。

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「ちいさいおうち」中島京子

「ちいさいおうち」中島京子

昭和10年代に東京郊外の赤い屋根の小さな洋館で女中をしていたタキの回想。
かわいらしい奥さまと、かわいいぼっちゃんの世話で、日々が充実していた。
しかし、戦争がしだいに影をおとし・・・

すばらしかった!
久々に、一気読みをしてしまいました。
直木賞をとったそうですが、当然だと思います。
文章が、派手さは無いけど、しっかりしていて、言葉の使い方が的確で、滋味深いのです。

メインのストーリーは昭和初期にお手伝いさんをしていたタキの回想録です。
お手伝いさんといっても悲惨な感じとか(おしんみたいな)ではなくて、自分で言ってるように「花嫁修業みたいなもの」。仕えている先が、ある程度裕福で、お家も綺麗だから、なのでしょうが。
この年代は、満州事変から太平洋戦争につきすすんでいく、暗い時代だったんだろう、と後生の私達なんかは思ってしまうわけですが、実際のところ、(戦争終末期はともかく)わりと裕福な一般市民は、こういうのんびりした雰囲気もあったのかもしれませんね。

で、ふつうにあの時代のタキの一代記、として読んでも面白いのですが、そこにいろいろ(恋とか!)
絡んできて、とくに終章のストーリーは圧巻です。

終章まで読むと、題名の「ちいさなおうち」の意味しているところが分かります。

とにかく上手い!
久々に大満足の読後感でした。

中島京子さんはだいぶ前になりますが「イトウの恋」も読んで、こちらも面白かったです。
これは、明治時代に東北を旅した女性イザベラ・バードの従者のイトウの手記。という構成。
中島さんはこういう「語りモノ」をまじえたスタイルが得意なのかもしれませんね。

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「アルバトロスは羽ばたかない」七河伽南

「アルバトロスは羽ばたかない」七河伽南 東京創元社


高校の文化祭の日におきた、転落事件。それに先立つ季節におきた、七海学園の子たちが関係する
小さな事件。転落事件の謎を調べるうちに明らかになる真相とは。

前作に続き、児童養護施設七海学園が舞台。前作の人物がかなり顔を出すので、やはり順番に読んだようがよさそうです。
2作目にしてすばらしい完成度!!ミステリとしてもよくできているし、舞台が児童養護施設
なだけあって、子供にまつわる、ちょっと辛いような話も出てきますが、希望を失わせない力強さがあるのが心地よいです。少女たちの心理描写も深いところをついていて、
久々に、大当たりだなと思わせる作家さんでした。おすすめ!!

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「七つの海を照らす星」七河迦南

「七つの海を照らす星」七河迦南 東京創元社

第18回鮎川哲也賞。とても久々に「このミス」のランキングをチェックしてみたときに
気にかかった本。

児童養護施設「七海学園」に勤務する保育士、春菜が遭遇する、小さな事件。
学園に伝わる「七不思議」との絡みを見せながら、いくつか起こる謎を解きながら。
さいごに見えてきた真実とは。

文章が非常に上手くて、すらすら読めました。そして、上手すぎるがゆえに、少しでも
「あれ?」と思ったところが、ミスリードだったりするので、一つひとつの謎の答えは
案外分かってしまいます。でも、それが最後に見せる景色は、なかなかのもの。
とても完成度が高く、楽しめました。

舞台が、親と離れて暮らす児童養護施設で、時代を映した問題提起が
盛り込まれていたりするのもさすがです。謎をとく探偵役は、主に、
児童相談所の海王さん。セオリーでいくとこの人が素敵な人だったりするのですが(笑)、
そうではなく。でも、さまざまな事情を抱えた子供たちを暖かく見守る海王さんと、がんばる
春菜の姿がすがすがしく、いい読後感です。

舞台が七海市、ということでなぜか昔よく読んでいた若竹七海さんを思い出しました。
舞台が、田舎の海辺の町で、それが葉崎市(若竹さんの作品の

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「おやすみラフマニノフ」中山七里

「おやすみラフマニノフ」中山七里  宝島社

音大でバイオリンを専攻する晶は学内演奏会でラフマニノフピアノ協奏曲2番を演奏するオケのオーディションに応募し、コンマスの座を勝ち取る。首席奏者にはストラドを使う権利が与えられる のだが、そんな中、時価2億円のストラディバリのチェロが盗難にあった。監視カメラには なにも映っておらず、密室状態の盗難。犯人は誰?と皆が疑心暗鬼になるなか、 演奏会を目指して練習は続けられるが・・・

さよならドビュッシー に続く2作目。

前作で登場した岬さんがここでも登場。
ちらっちらっと前作の登場人物も顔を出します。
で、今回の主人公はいちおう晶君とチェロ奏者で音大学長の孫娘の初音さん、
探偵役が岬さん、
ということになるのかな。
しかし盗難されたのはチェロで、メインで話を進めていくのがバイオリンの晶くん。
なので、はっきりいってチェロ盗難事件は添え物程度^^;;しかも最後で明かされるトリックが・・・^^;;
正直、ミステリとしては弱いと思います。ふつうに音楽青春小説でもよかったような。
あいかわらず曲の描写はうまく、メインはラフマのPコン2番という超名曲、それに、チャイコのバイオリン協奏曲や、ベートーベンのピアコン5番「皇帝」などなど、
どれを取ってもすばらしい。
そこに、音大生ならではの悩みや頑張りなどが加わり、オケならではのメンバーの多彩さが加わるので、面白いには面白いのだけど、
ちょっと主人公のキャラが弱いような気がするのが難点だろうか。それに晶くんの一人称が
「ボク」なのがとても気になる^^;;なにかの叙述トリックなのかと思ったら別にそうではなかった。。。
豪雨のなかのチャイコンの演奏シーンとか、迫力満点で印象に残るシーンもあるのだけど。

とても描写が細かいだけに、いくつか気になってしまった点なども。
たとえば、演奏会がはじまるシーンで、「開放弦を鳴らしたあとG線からチューニング」ちがーう。
バイオリンはG線から1本ずつチューニングしていくわけではないのです。
・コンマスが弦を切ったら楽器を取りかえるのは隣の人よ~。
・ボーイングのガラミアン奏法とアウワー奏法。ボーイングのスタイルは幼いころからたたきこまれるのですぐには変えられません。奏法はたくさんあるけど運弓スタイルってもっと根本的なものなのですが。。。

なんて、重箱のすみをつつくような指摘ですみません^^;;中山さんてきっとピアノ弾きさんなんでしょうね。

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「文学少女と穢れた天使」 野村美月

「文学少女と穢れた天使」 野村美月  ファミ通文庫

今回は、ななせちゃんメインの話。
遠子先輩があまり出てこないのが残念というか??
今さら気づいたのだけど、毎回、「独白」があるのですが
その形式が。非常に、よく考えられているのですね。
誰かへの手紙だったり、小説だったり色々。
ちゃんと、「独白」が出てくる必然性があるというか。上手いです。
そして思ったよりも長く続きそうなこのシリーズ。
次巻でいよいよ「彼女」が登場か。楽しみです。

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「八本脚の蝶」 二階堂奥歯 

「八本脚の蝶」 二階堂奥歯  ポプラ社

著者がどうなったか、予備知識はあったけれど、
やっぱり、だんだん読むのが辛くなっていった。
この人も最後まで世界と自分との関係を上手く構築できなかったのだろう。
だけど、
恋人もいて、思想観、世界観を共有し導いてくれる友人がいて、
両親兄弟がいて、やりがいのある仕事をもっていて、
それでもダメだったの?
と問い掛けずにはいられない。

死にたくなるのは、たぶん、神経と脳の病気。
だったとしたら、まちがいなく、あふれる才気を持ち合わせていたこの人を
死なせてしまったのは、もったいなさすぎる。

生きるのが辛かったとしても、
生きていてほしかった。

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「文学少女と死にたがりの道化」野村美月

「文学少女と死にたがりの道化」野村美月 ファミ通文庫

“文学少女”と死にたがりの道化

ぼく、井上心葉は、中学時代に気まぐれで投稿した小説が新人賞をとり、 謎の美少女覆面作家として、周りに翻弄され、大事なものも失った。

だから、高校に入ったら、波風のたたない平凡な生活をおくるはずだったのに。

なぜか遠子先輩に、むりやり文芸部に入部させられ、
毎日、お話を書かされるはめに。

なぜって遠子先輩は、「小説を『食べる』妖怪」、文学少女なのだ!


ラノベ。
登場人物なんかはいかにもラノベらしい部分もありながらも、なかなか読ませる。

これは本好きの人にはとても楽しめると思う。

遠子先輩は本を食べながら(ページを破ってぱりぱりと!)、
それが面白い話だと、極上のフレンチやらスイーツやらに喩えて
アツく感想を語ってくれるのだから(笑)

この小説自体、太宰の「人間失格」を下敷きにした
ミステリじたてになっていているし、
作中にもさまざまな小説が登場して、細かいところでいろいろ楽しめます。

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「ケッヘル」中山可穂 

「ケッヘル」中山可穂  文藝春秋

ケッヘル〈上〉ケッヘル〈下〉

伽椰はフランスの港町カレーの海辺で、海に向かって一心不乱に指揮をしている男を見かける。 男が振っていたのはモーツァルトの交響曲だった。 その男、遠松鍵人に頼まれて猫の世話をすることになり、さらには遠松の会社「アマデウス旅行社」で 働くことになった伽椰。

しかし最初の仕事でいきなり事件が。モーツァルトの曲に彩られた、錯綜する人間関係が織り成すドラマの幕が上がった。。。

全編にわたってモーツァルトの曲が聞こえてくるような小説。語り手が何人か交代し、しかも
いいところで交代してしまうので、続きが気になって一気に読んでしまう。
中心に鍵人を配してはいるが、複雑に織りあがった人間関係は読み応えがあり、ミステリじたてで
なかなか真相も分からず、最後まで読ませる。

モーツァルトの音楽に執りつかれたと言ってもいい鳥海武の生き方だが、
これもモーツァルトという作曲家の力のなせる技で、これが例えばブラームスとかだと
いまいちピンとこないであろう。モーツァルトにはそんな、狂気と紙一重みたいな部分があるのではないかと思う。


そしてラストシーンの読後感がとても良いのも好印象だった。
いくつか印象的な使われ方をしているモーツァルトの曲は、ぜひ聞いてみたくなってしまう。
とりわけ孤児院ミサのアニュス・デイなど涙しそうになった。


<若干ネタバレ>

美津子がビオラ弾きという設定も個人的に嬉しい(笑)「目立ちたくないけど、一番にはなりたいの」
ちょっと笑ってしまいました。そのとおりかも?(笑)
学園の夏休み。美津子と鍵人が弾くはずだったVnソナタ編曲はいったい何番だったのだろう。
幸せなままいられなかった二人が痛々しい。

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「弱法師」中山可穂 

「弱法師」中山可穂 文芸春秋

今までの中山さんが書いてきた恋愛の形とは違ってちょっとヒネってあるので
最初は、あれ?と思うのだが、読み進めていくうちにやっぱり中山さんだなーと思う。
3編がおさめられているのだが、なかでも
作家と編集者を題材にした、「卒塔婆小町」がすごくよかった。
深町という作家がみずからの命を削るようにして美しい物語を紡ぎ上げ
それを編集者にささげる。
深町が書いたという設定の小説がとても美しい。もっと読みたかったと思う。

作家も、編集者も、どちらも壮絶で、息苦しくなるくらい。
ぎりぎりのところでバランスを保っている人間関係は、やがて破滅に向かわざるをえない。
憧れるような気もするけど、自分にはこんな関係はしんどくてやってられないだろうな。。。

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