「光待つ場所へ」辻村深月

「光待つ場所へ」 辻村深月 講談社

しあわせのこみち ・ チハラトーコの物語 ・ 樹氷の街
の3作が入った短編集。

「しあわせのこみち」
絵を描くことにひそかな自負をもつ清水あやめは大学で出会った田辺颯也の映像作品に衝撃を受けるが・・・
『ひそかな自負』って辻村作品の登場人物にはよく出てくるモチーフで、表面上は周りと合わせながらも、心の中では、自分は普通とは違うと思ってるという少し上から目線な性質。
こういう、ジレンマ、みたいのを表現するのが辻村さんは上手いよなーと思います。

鷹野、が出てきたから、おそらく、あやめも「冷たい校舎~」の登場人物なんだろうなと思うんだけど、読んでる最中にはちょっと思い出せなかった・・・それと鷹野の彼女って誰だったっけ?


「チハラトーコの物語」
チハラトーコはガチで美人なモデル。トーコは嘘をつき続ける。なぜって、彼女の嘘は誰にも迷惑かけてないし、周りを幸せにするものなのだから。

チハラトーコって誰だったかな・・・これまた思い出せない。赤羽環が出てきたからたぶんスロウハイツ?

と、いうように、ちょっと思い出せない歯がゆさが脳裏にあった最初の2作。もちろん単独で読んでも別に問題なく面白いのですが。

「樹氷の街」合唱コンクールの自由曲で決まった「樹氷の街」。だが、ピアノ伴奏の倉田梢の腕がおいつかず・・・

中学だと、合唱コンクールってクラスの男子とかがなかなかまじめに歌ってくれなくて大変でした^^;; 

私、樹氷の街、歌ったことないんですよね。他クラスが歌ってるのを聞いたことあるくらいで。中盤の転調が激しいから難しそうだな、という印象でした。
大地讃頌とか河口の伴奏もかっこいいですよね。弾いてみたいけど、無理かな^^;;


光待つ場所へ、という表題のとおり、最後には明るい印象でおわるので読後感よいです。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

「V.T.R」  辻村深月

「V.T.R 」辻村深月

3年前に別れた恋人、アールからふいに電話がかかってきた。「今からあなたはアタシの酷い噂をたくさん聞くことになると思う。でも、ティーには知っておいてほしい。アタシは変わってない」 そしてティーはアールの行方を探し始めるが・・・

辻村さんの著作「スロウハイツの神様」の登場人物、チヨダコーキが書いたデビュー作、
という設定の物語。

ばりばりラノベ、っていうのは、まあ設定上しょうがないとして、読んでる最中は、わりと面白かったんだけど、それに、オチにも驚かされたけど、読み終えてみて、ツッコミ所が満載なのはちょっと^^;
;時系列とかを考えると、いくらなんでも無理があるし、説明されなかった部分もいっぱいあるし、何より、アールがティーと別れたあと何を考えて行動していたのかまったく書かれなかったのは残念。
それぞれの人物造形はわりと上手く出来ていただけに余計残念。

デビュー作という設定だからわざと未熟な感じを残したのだろうか。

「スロウハイツの神様」という作品にもあんまり思い入れがなかったので、ふつーに小説として
読んでしまったから、なおさらかもしれない。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

「名前探しの放課後」辻村深月

「名前探しの放課後」辻村深月

依田いつかは、気づいたら3ヶ月前にタイムスリップしていた。 いつかの記憶にあったのは、3ヶ月後、クラスメイトの一人が自殺する という出来事。 でも自殺するのは誰なのか、が思い出せない。 いつかは、自殺を阻止しようと、坂崎あすな、友人の長尾秀人たちと 奔走する。 そして、該当者らしき学友が見つかり・・・
デビュー作の「冷たい校舎~」に似てるな、なんて思いながら読んでいました。 あいかわらず辻村さんらしい細かい心理描写、高校生特有の心情が 丁寧に書かれていて読ませます。 高校生という年頃に加えて、舞台となってる地方都市特有の閉塞感とかの 描写も上手い。

これ、辻村さんの前の作品と密接に繋がってるんですよね。(私の場合
忘れてた登場人物も多いんですが^^;;)
少なくとも既存の作品を全部読み終わってからこれを読んだほうが
いいのではないかと思います。(全部ではなくてもいいんですが。。。でも
できればやっぱり全部)

最後にあれをもってきちゃうとは。
少なくともあの作品を読んでいない人にはオチの意味がわからなかったのでは。
と思うと、それは単独の作品としてみた場合どうなんだろう。と思ってしまいましたが。。。

| | Comments (2) | TrackBack (0)

「スロウハイツの神様 上下」辻村深月

「スロウハイツの神様 上下」辻村深月 講談社ノベルス

練馬にある古びたアパート。そこには、
新進脚本家、赤羽環。人気作家、チヨダコーキ、漫画家志望の狩野、画家志望の
すみれ、映画監督志望の正義、らが一緒に暮らしていた。環に誘われて
集った彼ら。
そこに、一人の美少女の出現が、すこしずつ波紋を起こし。。。

ちょっと「ハチクロ」のような。
夢に向かう若者がボロアパートに集い、わいわい楽しくやっていて
いつまでもこの幸せが続けばいいなと思ってるけど、心のどこかで
それは永遠ではないことを知っている、みたいな。

それと同時に、とても才能のある環とコーキを前にして、
未だ才能が世に出せない正義や狩野の葛藤が描かれて。

環が臆面もなく「コーキが一番で、スロウハイツでの「手塚治虫」で
私がNo2」と言っちゃうあたりは、ちょっとなんだかなと思ったりもするけど。
才能ってなに。天才てなに。とか考えてしまう。

最後まで読んでみると、これは、おとぎ話。なのかな、と思う。
この世に立ち向かうための、かすかな強い光をくれる「おはなし」。
そう、ちょっと「凍りのくじら」に似ている。ちょっとつながりもあるし。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

「ラギッドガール」飛浩隆 早川書房

「ラギッドガール」飛浩隆 早川書房

「グランヴァカンス」の続編。
前作の「大断絶」が起こった周辺や「蜘蛛」の成立過程などを美しい筆力で
描き出している。
ときどき、SF用語についていけなくなるのだが(^^;;かまわずに
読みすすめてしまう。
しかし、ここにきて、仮想現実で自らの分身をあそばせる仮想リゾートが
現実化してきたのだな。(「セカンドライフ」)
ついに、現実がSFに追いついてきたのか。。。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

「檸檬のころ」 豊島ミホ

「檸檬のころ」 豊島ミホ 幻冬舎

誰にでも、切なくキラキラした一瞬はあったはず。
あのころの気持ちを思い出させてくれるような
すてきな小説。
地味系女子高校生(笑)だった私にはほんとにツボでした。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

「成吉思汗の秘密」 高木彬光

「成吉思汗の秘密」 高木彬光  光文社文庫

義経=ジンギスカン伝説を検証する、推理小説のスタイル。
主人公の、名探偵が、病気で入院中にひまつぶしに義経ジンギスカン伝説を
検証しちゃおうという。まるで「時の娘」
・・・ていうか、本文で言及されてるので、まさに日本版「時の娘」なわけですが。

内容は、なかなか面白かったです。
説得力がある、と言ってもよい。
けっこう、義経ジンギスカン説の証拠?物件てあるんですね。しかも
日本だけじゃなくて大陸のほうにもあるらしい!

終章にいきなり、ある女性が登場して、ジンギスカンの名前の秘密がときあかされる
んだけど、なんだか唐突だなーーと思ったら、
その人は本当に、単行本(?)でのこの作品を読んで、ジンギスカンの名前の秘密を
検証して、それを作家に送ったのだそうだ。
そして、ノベルス版?にそれが収録された。
(記憶でかいているので版については違うかも)
その名前の秘密についても、おもしろいなーと思ったんだけど、ちょっとそれは
こじつけでは?と思わないでもない。。。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

「EDGE5 ロストチルドレン」とみなが貴和

「EDGE5 ロストチルドレン」とみなが貴和  講談社ホワイトハート

EDGE5 ロスト・チルドレン


品川埠頭に錬摩を呼び出したのは、15年前に海に沈んだあの男なのか!?
しかし再会を期待する錬摩の目に映ったものは、全く意外な光景だった。

天才プロファイラー大滝錬摩のシリーズ「EDGE」最終巻。

前作までで展開されていた連続幼女誘拐事件の真相に加え、
錬摩の過去が明らかに。

大団円といって相応しい、きれいに締めた終わり方だったと思う。きっちりと、
すべてに決着がつき、読者に不満を残さない。
まあ、錬摩、今回全然プロファイリングしてないじゃん(偶然が重なってるなあ)とか
終盤、やや説明過多だなあ、とか、少し感じましたが、
それは、あえて言えば、であって、ほとんど気になりません。

錬摩と宗一郎の決着についてもね・・・ちょっとびっくりしましたが(笑)
でも満足です!!

とみながさんについては、早くも、次回作を期待したいところ。

| | Comments (0) | TrackBack (0)

「照柿 文庫版上下」高村薫 

「照柿 文庫版上下」高村薫  講談社文庫

照柿(上)
照柿(上)

照柿(下)
照柿(下)

熱処理工場で働く野田達男。人身事故の現場で目撃した女に一目ぼれした合田雄一郎。 その女、美保子は達男の恋人だった。 照柿色は大阪の西日の色であり工場の炉の色であり・・・それに照らされ、 人を狂わせるような暑さの中、男たちは、じわじわと追いつめられ、ついに事件は起こる

ハードカバーから全面改稿。

私の中では合田ってどっちかというとクールで淡々としているイメージだったので、
「照柿」で、一目ぼれするわ時々激情をほとばしらせるわの合田の姿にはちょっとびっくり。
こんな人だったのか。。。こんな一面もあったのか。。。と。
ある意味レディ・ジョーカーをまた読み直したくなった。
ちなみに私の読んだ順は、レディジョーカー→マークスの山、で照柿 は読んだかどうか記憶が定かではない。


文庫版の解説にあったが、改稿といっても、刈り込んで短くなっている。
気になってハードカバーと一部照らしあわせてみると、
全体的にセンチメンタリズムが消えている。
例えば義兄の書き置きとか。
映画館で合田が美保子にかける言葉とか。

結構びっくりしました。
義兄の書き置きってハードカバーでは、こっぱずかしい程の言葉だったのね。。。

これはレディジョーカーの文庫も、どうなるのか。。。
といってもレディジョーカーで帰結する二人の立ち位置は、まさか変わるまい。
と思うのだけど。


高村さんの作品には圧倒的なリアリティがあるのは、綿密に取材を重ねて、緻密に書き込んでいるから
というのもあるけど、
こういう育ちでこういう思考の持ち主だからこういう行動をする、というところを
自分の中できっちり設定して書いているからだろう。
講談社の小冊子「インポケット」のインタビューを読んで、そう感じました。
次回作は合田42才!
きゃー!!
いったいどんな合田になっているんだろう!そして義兄さんは!?

| | Comments (2) | TrackBack (0)

「ぼくのメジャースプーン」辻村深月

「ぼくのメジャースプーン」辻村深月 講談社ノベルス


ぼくの友達、ふみちゃんは、頭がよくて、がんばりやで、なんでも出来て、
クラスの皆から好かれていて、でも特定の友達は作らない。
そんなふみちゃんは、うさぎが大好き。

ある日、一人のイカれた奴によってうさぎが惨殺された。
ふみちゃんは、その様子を発見してしまい、ショックを受け心を閉ざしてしまう。

実はぼくには不思議な力がある。
その力でふみちゃんを救えないだろうか。。。

びっくりしたのは、これが「子供たちは夜と遊ぶ」の姉妹編ともいえること。なるべく
そちらを先に読んでからのほうが楽しめるだろう。そちらで疑問に思っていたことがこっちで解決されている。

あいかわらず心理描写が細かくて濃いし、
作者はきっと心理学かなにかを専攻したんだろうなーと思わせる、知識を繰り出してきて
すごいなーとは思うんだけど、ちょっと、智に走り過ぎなような感じ。


たぶん、この作品の中で提示される「ゲーム」のありかたについて
私があまり好きじゃないからなのだと思う。

それから小学生が主人公なのでいまいち心情に共感しずらいというのもあり。

「ゲーム」が設定されていて登場人物がそれに影響されて動くことや、
頭が良いために、周囲から浮いてしまう子が登場すること、
など、ああ辻村さんらしい作品だなあとは思ったのだけど。

章タイトルにも工夫が凝らされているが、工夫がただ『工夫』なだけで
それが意味あるかどうか疑問に思う。
(それとも私が気づかなかっただけ?)


ただ、コンスタントに作品を刊行しているところは本当にすごいと思うので
今後も辻村さんにはがんばっていただきたい。


| | Comments (0) | TrackBack (2)