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「凍」沢木耕太郎

「凍」沢木耕太郎 新潮社

登山家の山野井泰史、妙子夫妻がヒマラヤのギャチュンカンに登山したときの
壮絶なノンフィクション。

山野井さんのことは、10年くらい前にたまたま雑誌で見て知っていた。
若きアルピニストで、ちょっと下世話な興味だけど奥さんは9才年上で、
奥多摩で簡素な暮らしをしながら、山登りにうちこむ。
両親や兄の影響でちょっとは山好きな私は、単純に「わー山野井さんてかっこいい」と
思って覚えていたのだった。

しかしこのヒマラヤ登山の話は知らなかった。

あらかじめ結果を分かっていて読んでいたものの、やはりどきどきというか
ぞくぞくしながら読んでしまった。ギャチュンカンに登り始めたところからはもう
途中で止められなかった。クライムダウン(下降)のあたりは、
あまりの苛酷さに、読むのが辛い、、、と思ってしまった。
なにせ、最初の夜は、岩棚に50cm幅のテラスを切ってそこでビバーク、
二人が並んで横にもなれず、向かい合って一人が足をもう一人の腹に乗せる体勢でしか寝られない、という時点で
うわー大変、寝返りもうてないじゃん。なんて思ったのはまだまだ序の口。
次の夜はテントで泊まれたが、翌日は幅わずか10センチ幅のテラスに一晩座った体勢でビバーク、
雪崩にはおそわれ、妙子さんはロープで宙吊りになる。泰史さんはようやく
救助にたどりついたものの、二人とも酸素不足で目が見えない。
ついには座るだけの幅もない岩壁で、打ち込んだロープにかろうじて腰掛けてビバーク。
もちろん高度は7000メートル。落ちれば命は無い。
想像にあまるほど苛酷な状況。

この夫妻の精神的強靭さはまったくすごいと思う。
どんな苛酷な状況におかれても、パニックになったり諦めたりせず、
淡々と「生きて下山する」ことを考えている。二人が二人とも。

月並みな言葉でしかないが、人間て凄い。

なんでこんな思いをしてまで登山を。。。とか思ったりもするのだが。
(私がやるような山登りとは全く比べ物にならない)


山野井さんが登山の美しさにこだわっていたのが印象的だった。
登るラインの美しさとか、壁自体の美しさとか、無駄の無さとか。
それは、なるべくく簡素な荷物で頂上をせめるというアルパイン・スタイルにも
通じているのだろう。

だからといって単に自分の美学のために登っているとか、そういうわけでは全然無いのだと思う。
ただ、山に登るのが好きで、それが人生のチャレンジにもなっていて、そんな中で
目標を定めていくとすれば、それがギャチュンカンの美しい壁であり、
他の山であり、だったのかあなと思う。

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凍沢木 耕太郎 新潮社 2005-09-29by G-Tools 冬の間に読むことをオススメ。 沢木耕太郎さん初の、山岳ノンフィクション。世界的に有名なクライマー、山野井泰史さんと、妻・妙子さんの、ヒマラヤ・ギャチュンカンの北壁への登攀を描いています。二人の精神力と生命力の強さに、終始圧倒されました。背筋が伸びるような本です。 沢木さんらしい綿密な取材に基づいた親切な説明があって、クライミングの知識がまったくない私にも、わかりやすい本でした。それでも、緊張感を失わない筆致で、一気に読... [Read More]

Tracked on March 23, 2006 01:53 AM

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