« 「冬の旅人」皆川博子 | Main | 「本格小説」水村美苗 »

「クライマーズ・ハイ」横山秀夫

「クライマーズ・ハイ」横山秀夫 文藝春秋

クライマーズ・ハイ

北関東新聞の記者、悠木。5年前に部下を亡くして以来、昇進をこばみ 1記者としてとどまってきた。そんな夏、 未曾有の大事故、日航機墜落事故が起きた。全権デスクを任された悠木は 地元紙としてのプライドと現実との狭間で苦悩しながら紙面づくりを進める。

その一方で、悠木は、親友、安西から共に「魔の山」谷川岳一の倉沢の衝立岩登攀に
誘われていた。だが、ちょうど出発当日、事故がおき、悠木は谷川に向かうことができなかったのだ。
一人で登山に向かったかと思われていた安西は、しかし、同じ頃、夜の街で突然倒れていた。

そしてまた、事故から17年後。悠木はふたたび衝立岩の下に立っていた。。。

すごく読み応えがあり、ぐいぐい引き込まれた。あの日航機事故のころ私は小学生で、事故の大きさもよく実感できていなかったけれど、
今あらためて、大変な事故だったのだと思う。
事故を扱った本は数年前に山崎豊子の「沈まぬ太陽」を読み、
その凄惨さにあらためて当時の関係者の苦労を思ったのだったが。

小説は、日航事故当時の過去、そして17年後の現在と交互に話しが展開する。
現在パートの衝立岩登攀シーンもすごくスリリングであるが(悠木が誰と登って
いるのかはネタバレしません)
やはり当時の新聞社の様子がリアリティと迫力たっぷりで読ませる。
地元でおきた事故といってもどことなく他人事な上司、過去に自分が携わった大事件をいまだに「勲章」とし、それを超えられまいと、紙面づくりの妨害にかかる上司。。。
対する若手記者は、12時間かけて山に登り現場を踏み、
スクープ取りの手に汗にぎる駆け引きをくりひろげる。
上司と現場の間に立たされ苦労し、安西の容体を心配し、家族との関係に悩み、
いろいろなものに翻弄されている悠木。
そんな中でひとつの答えを出したこと。悠木にとってはこれが一つの山だったのだろう。

当然、このころ携帯電話なんて無かったんだったっけな。と当時と現在の情勢変化が興味ぶかかったり。

登攀シーンのクライマックスも良かった。打ち込まれたハーケン、、、胸に迫るものがありました。

何のために山に登るのか、そう聞かれて答えた安西の言葉。
「下りるためさ」

何かから下りるためにはまず登らなければならない。

シンプルなようでいて深い、人生の命題なのだろう。

|

« 「冬の旅人」皆川博子 | Main | 「本格小説」水村美苗 »

や行の作家」カテゴリの記事

マンゾク!」カテゴリの記事

Comments

Post a comment



(Not displayed with comment.)




TrackBack


Listed below are links to weblogs that reference 「クライマーズ・ハイ」横山秀夫:

« 「冬の旅人」皆川博子 | Main | 「本格小説」水村美苗 »