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「イトウの恋」 中島京子

star-parple1「イトウの恋」 中島京子 講談社

イトウの恋


冴えない中学教師、久保が実家で見つけたものは、明治時代に
書かれたと思われる手記だった。それは、どうやら
イトウという一人の青年が、異国の女性I・Bと旅をしてゆく手記のようだ。
久保は、その青年の子孫と思われる女性に連絡を取り、その手記を
読み解いていこうとするとともに、自分の生徒に郷土史を知る
史料として青年のことを調べさせようとする。ところが、手記には後半が欠けていて・・・

この本は、久保によるイトウ青年の足跡さがしと、イトウの書いた手記が
交互に挟まれていくスタイル。

I・Bとはどうやら明治時代に東北や北海道などを旅したイギリス女性探検家
イザベラ・バードのことであり、イトウとは通訳をつとめた伊藤鶴吉(小説では亀吉)のことのようです。
手記中で、イトウはだんだんI・Bに魅かれていく自分に気づく。ちなみに当時イトウは20歳、I・Bはその倍くらいの年齢です。
このイトウの独白が良い。すごく良いのです。恋とははっきり気づいていないけれども、
彼女の笑顔がみたいために、なんでもしてあげたい、と思う気持ちとか、
二人でいろいろな話をした、こんなに誰かと突っ込んだ話をしたことは
後にも先にもなかった、とか。
それは確かに恋だったのだろうけど、もっと言ってみれば、人と人との強い結びつき、
みたいなものが二人の間に生まれていて、そんな関係が読んでいてじわっと心にしみてきた。

イトウの足跡を追う久保が語る、「二人は時代のほんの一瞬に奇跡のように出会ってそして恋におちたんだ。
I・Bが少し日本に来るのが早くても、また少し遅くてもだめだった」
というような文章が印象的。

明治時代・・・イギリスではヴィクトリア時代?にわざわざ
日本という果ての地に旅しに来たイザベラという人にもかなり興味がわいた。
(そういえば東北に旅行したときに、彼女の展示を見たような、かすかな記憶が。。。)
小説の中で彼女は言う。旅に出ていると本当の自分が取り戻せるような気がするのだ、と。

それから、久保に巻き込まれてなしくずしにイトウ探しに参加していく、
イトウの子孫の田中シゲル。この二人のやりとりもかなり可笑しくて楽しい。

いろいろな意味ですごく楽しめた素敵な小説でした。

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Comments

この本のことを先日掲示板に書いて下さった時
真っ先に思い浮かんだのが、水村美苗さんの「本格小説」だったんですよ。
その「本格小説」を読み終わったんですが、これがすっごく良くてー!
きっと瑛里さんもお好きなんじゃないかなとオススメにあがりました。
もし未読なら、ぜひ一度手に取ってみて下さいませ。

「イトウの恋」も、ぜひ読んでみようと思ってます(^^)。

Posted by: 四季 | October 02, 2005 09:08 AM

四季さん、こんばんは。
「本格小説」、四季さんの日記を読んだ時点で
「これ、私の好みそうだな」って思ったのです。
だから、こうしてオススメいただけて何だか嬉しいです(^^)
ぜひ読んでみますね!
イトウの恋 のほうも、ぜひぜひ☆

Posted by: 瑛里 | October 07, 2005 01:08 AM

瑛里さん、こんにちはー。
「イトウの恋」、読みました!
ほんと、イトウの手記がすごく良かったですね。
本人が自分の気持ちに気づいてないのに、
読んでる側にはひしひしと伝わってくるようなところとか。
現代の3人組との対比も楽しかったし。(笑)

「日本奥地紀行」も読んでみたくなりますね。
いやあ、素敵な作品を教えて下さってありがとうございます♪

Posted by: 四季 | October 30, 2005 06:04 PM

四季さん、こんばんは。
楽しんでいただけたようでよかったです^^
ほんと、このイトウの手記がいいですよね!
じんわりと暖かい気持ちにさせてくれます。
私も、日本奥地紀行を読んでみなくちゃと思いつつ、
まだなんですが・・・

Posted by: 瑛里 | November 01, 2005 01:18 AM

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Tracked on October 30, 2005 08:10 AM

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